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実態は「労働者」なのに「名ばかり事業主」の苦しみ

ono20190416

働く場所も勤務時間も仕事の段取りも会社に決められている「労働者」なのに、契約上は「個人事業主」――。そんな矛盾した仕組みの下で、働かされている人たちがいる。個人事業主には原則、労働基準法が適用されないことから、残業代未払い、休憩なしの長時間労働、最低賃金以下といった「働かせ放題」が一部でまかり通っているのだという。行政に相談しても「あなたは労働者ではない」と門前払いされるケースもある。
(中略)
契約上は個人事業主なのに、雇用された労働者と同じように働かされる「名ばかり事業主」は、美容師業界だけではない。健康飲料や化粧品の訪問販売、IT技術者、塾講師、宅配便ドライバー、大工、集金業者……。さまざまな業種で、かねて問題とされてきた。
「名ばかり事業主」は多くの場合、交通費や社会保険料、業務に必要な経費などは自己負担だ。労働者に適用される労働基準法も「労働者ではない」という理由で、原則として適用されない。このため、実質的な労働者でありながら、最低賃金や残業代支給、労働時間の制限といったルールに守られない、無防備な状態に放置されている。(Yahoo!ニュース 4月9日)

本来、個人事業主は勤務時間を自己裁量で設定でき、さまざまな組織のしがらみとも距離を置ける立場でなければならない。自由と不安定がセットになった立場が個人事業主なのである。取引先も複数におよび、リスクヘッジを図るのが通例だ。

ところが、この記事が取り上げた個人事業主のように、専属契約だと名ばかり個人事業主に陥りやすい。

名ばかり個人事業主を強いられそうな会社とは、そもそも契約を結ばなければよい。だが、就労先が限られた状況に置かれていれば、そうはいかず、損を承知のうえで契約を結んでしまうのだろう。

当の会社にとっては、給与以外に諸経費が発生する正社員の雇用よりも、個人事業主への業務委託のほうが割がよい。就業規則も気にしなくてもすむのだから、ブラック労働を強いるのは、いわば必然の結果ともいえる。

余人をもって代えがたいスキルをもっている個人事業主ならば、対等な立場で条件交渉ができるが、通常は会社が提示した条件に従っている。依頼主の良心に頼らざるをないのが現状だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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