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医師残業上限、年1860時間=過労死ラインの倍に-厚労省検討会

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厚生労働省の医師の働き方改革に関する有識者検討会は28日、2024年度から医師に適用する残業時間規制に関し、一部の勤務医の上限を年1860時間(休日労働を含む)まで認める報告書を大筋でまとめた。厚労省は今後、必要な法令改正などの作業を進める。
医師、書類作成で多忙=人手不足深刻-過労死白書
この上限は月換算で155時間となり、いわゆる「過労死ライン」(複数月平均80時間)の2倍近くになるため、対象者については連続勤務時間制限などによる健康確保措置を義務付ける。
4月から大部分が施行される働き方改革関連法では、実質的な残業時間の罰則付き上限規制が導入される。医師も規制対象だが、特殊性を踏まえた対応を決め、5年後から適用される。
報告書によると、一般の勤務医の上限は一般労働者と同水準の年960時間とする。一方、地域の医療提供体制確保の必要性からこれを超えてしまう医療機関の勤務医のほか、一定期間に集中的な診療を必要とする研修医や高度な技能の習得を目指す医師は年1860時間まで容認する。
(時事通信 3月28日

外科医の労働時間は上限案をはるかに上回っている。やや古いデータだが、「平成24年度日本外科学会会員の労働環境に関するアンケート調査」で20代と30代の外科医の約4割が年3000時間超の時間外労働を行っていたことが分かった。長時間労働は医師の健康を損なうだけでなく、医療事故とインシデントの原因にもなりやすい。同上の調査では、外科診療における医療事故とインシデントの原因で最も多かったのは「過労・多忙」(81.3%/複数回答)だった。

医師の労働時間が長時間におよぶ背景には、医療技術の進歩と患者の高齢化も挙げられる。例えばロボット支援技術や内視鏡外科手術は手術時間が長いが、多くが保険償還されつつあるので、手術件数の増加が予想され、手術の延べ時間が延長される可能性も高い。あるいは患者の高齢化に伴い、手術を受ける患者が何らかの併存疾患を保有していると、周術期管理で医師の負担が増えていくという。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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