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介護人材に主婦をアテにする政府の大誤算

201904044

今回の外国人労働者の受け入れでも「特定技能1号」の対象業種のなかでも介護人材は最多の6万人の受け入れを見込んでいる。政府は2023年には約30万人の介護人材が必要だと見ているが、6万人の外国人材を受け入れても残り24万人が不足することになる。
政府はどうするつもりなのか。じつは今回の外国人受け入れ見込み数6万人を算出した根拠となる「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」にはこう書かれている。
「向こう5年間で30万人程度の人手不足が見込まれる中、今般の受け入れは、介護ロボット、ICTの活用等による5年間で1%程度(2万人程度)の生産性向上及び処遇改善や高齢者、女性の就業促進等による追加的な国内人材の確保(22~23万人)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け入れるものであり、過大な受入れ数とはなっていない」
つまり高齢者と女性で22万人の介護人材を確保し、介護ロボットやICT(情報通信技術)の活用で2万人分に当たる生産性を向上させ、外国人の6万人を足して30万人を確保できると試算しているのだ。いくら元気な高齢者が多いといっても介護現場の主力になり得るとは思えない。そうなると女性に介護現場で働いてもらうことが政府の本当の狙いのようだ。
(PRESIDENT Online 3月26日)

この記事の筆者は、人事労務問題の取材で豊富な実績をもつジャーナリストの溝上憲文氏である。全文を掲載できないのは申し訳ないが、外国人介護人材をめぐる問題が深く考察された記事である。
介護業界には、特定技能の施行によって外国人介護人材の確保に期待する一方で、不安も広がっている。欧米に韓国や台湾も加わってアセアン各国の人材獲得競争が激化するなかで、日本を選んでもらえるのか、さらに介護職を選んでもらえるのか。2つのハードルがある。現場に受け入れて以降、いかにしてミスマッチを回避して戦力として機能させるかという課題の以前に、入口の段階で不安がよぎっているのだ。

さらに地方の介護事業者は、雇い入れた人材が時給の高い関西圏や首都圏に流出してしまうのではないかという不安を抱いている。
この窮状を主婦層の活用で補おうとしても難儀だろう。介護よりも心身の疲労度が少なく、賃金水準の高い仕事はいくらでもあり、就労を考える主婦層が介護現場に入ってくることは稀ではないのか。目下、介護人材不足の打開策は見出せていない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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