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日立と系列10社に改善勧告・指導 技能実習業務で違反

ono20180313

日立製作所とグループ会社10社の計11社12事業所が昨年4~9月、国の監督機関「外国人技能実習機構」の実地検査で、技能実習適正化法違反があるとして改善勧告や改善指導を受けていたことがわかった。朝日新聞の取材に日立が認めた。実習での必須業務を技能実習生にさせていないことや、給与が最低賃金を下回っているなどの違反が指摘されていた。
日立では、笠戸事業所(山口県下松〈くだまつ〉市)で「電気機器組み立て」の実習生に必須業務以外の作業しかさせていないなど同法違反の実態があるとみて、実習機構に加え法務省などが昨年から今年にかけて実地検査し、日立への行政処分を検討している。日立広報・IR部は笠戸について「現時点で法違反と認定された事実はない」とするが、他の現場では違法状態が広がっていたことが明らかになった。
日立は経団連の中西宏明会長の出身企業。こうした大企業グループで軒並み同法違反の指摘が表面化するのは異例だ。
(朝日新聞デジタル 3月5日)

来たる4月1日に新在留資格「特定技能」が施行される。ILO(国際労働機関)から問題視されるまでに劣化していた外国人技能実習制度の反省に立ったうえでの施行である。その意味で、日立製作所グループ10社に改善勧告・指導が入ったことは一罰百戒の趣旨が込められているのだろう。
最低賃金を下回るという違反の横行は、就労先の倫理観やコンプライアンス意識だけでなく、実習というタテマエから原則として転職できない制度設計にも起因している。この問題は、技能実習生から相当数が転職可能な特定技能に移行が進めば、解消に向かうとも期待されている。
ただ、地域間の賃金格差による就労先の偏在が懸念される。都道府県別最低時給は、東京都985円、大阪府936円だが、時給が700円台後半の県が東北、山陰、四国、九州にわたって29県もある。
外国人材の多くは日本に稼ぎに来ているのだから、来日700円台の地域に就労しても、東京や大阪の会社に転職する人が続出するのではないか。地域による偏在が顕著になることも想定できるが、偏在の調整に向けて地域枠の設定などが実施されれば、来日希望者の減少にもなりかねない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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