Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

エース級銀行員、他業種に転職

「夜、空いている日に会えないか?」。1月中旬、都内の情報技術(IT)企業で働く20代男性に1本の電話がかかってきた。声の主は静岡県の地方銀行に勤めている元同僚。転職の相談だった。
電話を受けた20代男性は同じ地銀から転職した。「地方企業の問題にもっと向き合いたかった」。転職の理由をこう振り返る。地銀に勤めたのは約3年。事業承継を円滑に進め、中小企業を再生させたい――。こんな理想を抱いて銀行に入ったが、待ち受けていたのは厳しい残業規制。思うように仕事ができず、当初の志は実現が難しくなった。
(中略)
銀行員の転職が活発になっている。リクルートキャリア(東京・千代田)によると地銀を含めた銀行員の転職者数は、2008年9月のリーマン・ショック直後の09年度と比べて17年度は4.55倍に増えた。全職種の平均(2.64倍)を大幅に上回っている。
(日本経済新聞2月21日)

そもそも銀行に就職する動機は何だろうか。高給と世間体と安定性を求めて銀行を選ぶ人は昔から多く、そんなタイプは銀行員というステイタスを優先して、閑職に追いやられても、なかなか辞めなかった。
だが、いまや40代後半に出向や転籍で中堅中小企業にどんどん出されてしまう時代だ。この人事を見続けているうちに、賞味期限の短い業界であることを痛感し、早めに退散してキャリアを切り替えようとする。これは当然の動きである。
銀行出身者は概して知的能力が高い。再就職先でミスマッチに至ると「銀行出身者は実務ができないので使いものにならない」と一蹴されるが、活躍している銀行出身者は各界に多い。起業してIPOを果たす銀行出身者も少なくない。
退職後の浮沈は出自ではなく、あくまで個人の問題である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。