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入社前から転職活動 安定志向と危機感が共存

若者の転職活動が早まっている。中には内定してすぐ次の職場を探す学生も出てきた。職場や仕事への違和感ばかりが理由ではない。理想のキャリアや安定した生活を手にするには、早くから転職の可能性を考え備えておかなければ安心できない――。転職活動をする若手に共通するのは、そんな不安だ。
「学生のうちに転職という選択肢を考えるのは当然です」。今春卒業予定で、大手商社への就職が内定している女子学生(22)は話す。内定を得た直後に転職サイトに登録。次に働きたい職場を探し始めた。
大手航空会社など6社の内定を得た。内定先は今のベストと満足している。両親は「入社3年は頑張って」と助言する。でも「3年は我慢なんて古い。自分がもっと活躍できる会社が見つかれば転職するつもり」。内定先は自ら思い描くキャリアを実現するための第一歩という位置付けだ。
(日本経済新聞 2月8日)

今年4月に社会人になる知人の息子は希望していたIT企業に入社するが、早くも転職先の候補を数社リストアップしたそうで、知人は「時代が変わったと認識すべきなのかね」と吐露した。
「まず新卒で入った会社できちんとキャリアを積んでから、転職したほうがベターと判断したうえで転職に踏み切るべきだ。息子にはそう諭したら『時代が違う』と言われたよ」
大卒入社2年目にITベンダーからアプリ開発ベンチャーに転職した技術職に、早期に転職する理由を聞いたら、こんな答えが返ってきた。
「最初に入った会社が自分のキャリア形成にふさわしいかどうかは分かりません。社会経験がない状態で入社するので“この会社は違う”と思う場合も多い。いまは人手不足が続いているので、我慢し続けるぐらいならサッサと転職したほうがよいと判断しました。いまの若い人は長続きしないのではなく、自分のキャリア形成に真剣だから転職するんですよ」
会社が渡り鳥志向に向き合うには、副業の解禁や、所属部署の選択などで本人希望を受け入れる体制整備が必要になったようだ。まだ会社に価値を提供できていない年代の社員に振り回されるのは不本意だと思うが……。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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