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地域医療の医師残業上限「年2000時間」厚労省提案…一般の倍、疑問の声も

20190124

医師の働き方改革について厚生労働省は11日、地域医療に従事する勤務医の残業時間の上限を「年1900~2000時間(休日労働を含む)」とする案を有識者検討会に提示した。医師不足の解消が見込まれる2035年度末までの特例とする。一般労働者の2倍にあたる長時間労働を容認するもので、委員の一部からは疑問の声も上がった。検討会で議論を重ね、同省は3月末までに結論を出す予定だ。
特例の対象は、救急や周産期などを担う地域の医療機関で、やむなく長時間労働にあたる医師に限る。医師の仕事の一部を看護師など他職種に移管する「タスク・シフティング」を計画的に推進することを義務付け、労働時間の削減を図ることとしている。
一方、一般の医療機関の勤務医については、一般労働者と同じ水準で、休日労働を含め年960時間を提案した。脳卒中などで労災認定される目安の「過労死ライン」(月80時間超)を踏まえた。長時間労働による医師の健康悪化を防ぐため、地域医療に従事する勤務医について、次の始業まで9時間の間隔(インターバル)を空けるなどの健康確保策を義務付ける。一般の医療機関の勤務医に対しては努力義務とする。
(ヨミドクター 1月15日)

医師の長時間労働をめぐる議論で、議論メンバーについて医療界には「医療側VS労働側」という見方がある。「労働側は医療現場を知らないから」という理由で議論をリードしようという意図まで潜めているのかどうかはともかく、「医療側VS労働側」という図式はやや異なる。
正確には「医療経営側VS労働側」である。医療経営側と相対するのは、現場では「勤務医側」だ。しかし、勤務医団体から議論メンバーを選出すると、収拾がつかなくなりかねないと懸念されたのだろうか。
地域医療の崩壊リスクとしてクローズアップされているのは医師不足だが、医師の健康崩壊リスクがあることも重視されるべきだろう。医師の健康崩壊は地方の医師不足を招きかねず、ひいては患者の健康にも影響してくる。
地域医療に従事する勤務医の残業時間の上限を「年1900~2000時間(休日労働を含む)」の案に対して、「医師にとって自分の健康と患者の健康のどちらを優先すべきか?」と問いかけたら、結論はどうなるのだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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