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不法残留の外国人実習生、借金背負い万引き 母国に悪質仲介業者

20190121

法務省が失踪した技能実習生2870人を対象に実施した聞き取り調査では、9割近くが送り出し機関に支払うため借金し、約半数は支払額が100万円以上だったと答えた。
技能実習生が最も多いベトナムでは、送り出しが一種の人材ビジネスとして成立しているとされ、実習先を辞めた場合に数十万円の「違約金」を徴収するケースもあるという。
日本政府は2017年以降、ベトナムなど実習生を多く輩出する各国と悪質な送り出し機関を排除する協定を結び、ベトナムなどは認定を受けた送り出し機関以外の仲介を禁止したり手数料に上限を設けたりしているが、現地では「効果が上がっていない」という指摘もある。
斉藤善久・神戸大大学院准教授(ベトナム労働法)は、日本側の受け入れ団体や企業が送り出し機関に接待や賄賂を要求する事例もあり、手数料が高額になっていると指摘。外国人労働者の受け入れ拡大を機に「日本政府が現地に出先機関を置いて、直接仲介する仕組みを考えるべきだ」と提言する。
(毎日新聞 1月13日)

外国人介護人材の確保をテーマにしたシンポジウム会場で、旧知の介護経営コンサルタントに再会したので、技能実習生の仲介などを手がけないのかを尋ねてみた。するとコンサルタントは「一切やりません」と断言した。
「制度そのものに実習生からの搾取の構図が組み込まれているので、コンサルタントとしてクライアント事業者に制度の利用を奨めることはできません」
搾取の構図とは、相手国の送り出し機関が実習生から保証金などを徴収している現状を指している。
日本政府は相手国政府と覚書を交わして悪質なブローカーを排除する方針を表明しているが、該当するブローカーに直接アプローチできるのは、あくまで相手国政府である。日本政府がブローカーに直接アプローチできるのではない。
ここに健全化への限界がある。日本側が健全化に努めても、相手国側の問題が解決されなければ、影響は制度全体におよんでしまう。商慣習の相違はそう簡単に埋まらないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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