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革新機構の田中社長ら辞任へ=経産省と対立解けず―機能停止の危機に

官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長は9日、辞任する意向を固めた。所管官庁の経済産業省と報酬、投資手法をめぐり対立しており、関係修復は困難と判断した。JIC取締役のうち、経産、財務両省出身の2人を除く全8人が田中氏と歩調を合わせ、10日にも辞任の意向を表明する。新規産業創出を目指した官民ファンドは発足から3カ月足らずで機能停止の危機に陥る。
経産省は9月に既存組織を改組してJICを設置。大手銀行グループ出身の田中社長ら経営陣に年額で1500万円の固定報酬、最大4000万円の短期業績連動報酬などを支給する報酬案を提示した。しかし、首相官邸などの「高過ぎる」との批判を受けて11月に撤回。さらにJIC傘下ファンドの個別出資に対する政府管理の強化を要求した。
JICは「人材を集められず、投資計画も遂行できなくなる」(役員)と反発し、当初報酬案などを前提にした予算措置を申請。一方、経産省はその認可を拒み、「100%近い株式を保有する国の意向を反映させていく」(世耕弘成経産相)と表明、両者の歩み寄りは困難となっていた。
(時事通信 12月9日)

ご奉仕のような役柄ともいえる官民ファンドの役員に報酬目当てで就任する人はいないだろし、役員の顔ぶれを見ても、とても報酬目当てとは思えない。公益に尽くすために役員を引き受けたのだろう。
しかし、就任の条件が覆されたのだから辞任はやむをえない。
田中正明氏の退任会見も、世耕弘成経済産業相の会見も、ともに焦点をずらしているような印象で、決裂の真相が明らかにされなかった。田中氏は社長就任会見で「ゾンビ企業を延命させる投資はしない」と強調していたが、その方針に経産省はどう反応したのだろうか。
経営方針をめぐって経産省が介入してきたことに異を唱えて民間出身の役員がいっせいに辞任したのは、たぶんゾンビ企業の救済が見え隠れしたからではないのか。まだ表面化していないものの、経産省が関与せざるえない深刻なゾンビ案件が潜んでいるのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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