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外国人就労拡大 見切り発車は許されぬ

 制度の根幹さえ曖昧では、十分な国会論議は望めない。
 外国人労働者受け入れ拡大のため、政府は新たな在留資格を設ける入管難民法などの改正案を国会に提出した。高度な専門人材に限っていた受け入れ政策の転換で、日本社会が大きく変容する可能性をはらんでいる。政府は否定するものの「事実上の移民政策だ」との指摘もある。臨時国会では既に多くの疑問が出ており、生煮えでは国民の理解は得られないだろう。
 政府は、二つの在留資格を新設し、これまで認めていなかった単純労働分野への就労を可能とする考えだ。一定の技能が必要な業務に就く特定技能1号は、在留期限を通算5年に限り、家族帯同を認めない。熟練した技能が求められる同2号は期限を更新でき、配偶者や子どもも帯同可能で、条件を満たせば永住にも道が開ける。(京都新聞 11月8日)

 外国人労働者の受け入れ拡大について、政府は「移民政策ではない」と主張しつづけているが、特定技能2号を取得できれば、在留期間の更新を繰り返せば永住も可能になる。
移民の法的な定義がないので、そもそも「移民政策ではない」という主張に根拠はない。定義がないからこそ、永住可能な在留資格と移民との区別をあいまいにしたまま法改正に臨めるのである。
しかし、やがて永住者が増えれば、移民は既成事実になる。政府の主張は修正を迫られるが、何かしら理屈をひねり出して、「それでも移民政策ではない」と辻褄を合わせるのだろうか。あるいは国際機関など海外から「移民政策である」と指摘され、議論の俎上にのせるのだろうか。
この問題がどう推移しようと、大量の外国人労働者を早期に確保したい産業界にとって、移民政策かどうかは二の次で、最優先事項は労働力の確保だ。外国人労働者受け入れ問題には、産業界目線と社会目線とのギャップがある。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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