Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

「実習生の人権侵害ないか」ワコール、委託先に異例調査

女性下着大手のワコールホールディングス(HD、本社・京都市)が、自社製品の製造工程にかかわるサプライチェーン(製品供給網)に、外国人技能実習生の人権を侵害している会社がないかどうかの調査を始めた。賃金不払いなどの不正行為があれば改善を求める。応じない場合は取引そのものを見直す。
(中略)
調査は、ワコールHD傘下のワコールとルシアンが今夏から始めた。主力の下着ブランド「ワコール」「ウイング」の国内の生産委託先60工場のうち、外国人労働者が働く約40工場が対象で、計538人の技能実習生が働く。40のうち32工場はグループと資本関係がない取引先だ。
ワコールHDの社員らが全国の工場を訪ね、「この3年間に労働基準監督署などから是正勧告を受けていないか」「実習生の労働時間はタイムカードなど客観的な記録があるか」「賃金は最低賃金額以上を払っているか」など約25項目をチェックする。
(朝日新聞デジタル10月15日)

外国人技能実習生が実習実施先で不当な扱いを受けていないかをチェックするのは、監理団体の役割である。監理団体が実習生を送り出した企業に定期的に訪問して、雇用関連の書類をチェックしたうえで、実習生に面談して問題の有無を確認するのだが、管理業務の精度は監理団体によって差がある。
ワコールHDがみずから調査に乗り出す理由は、委託先に実習生を紹介した監理団体に不満をもっているからかどうかは定かでない。監理団体にとっては信頼性に響くかもしれないが、それだけワコールが人権問題に敏感なのだろう。
実習生の受け入れ先に不法行為が認められれば、程度によっては実名が公表される。ただ、実名が公表されたところで、取り引きに影響が出るとは限らない。影響が出なければ、これまで頻発した諸問題を考えれば、改善を放置するケースも頻発するだろう。
その点、委託元のワコールから調査されれば、委託先はコンプライアンスの遵守に努めざるを得ない。ワコールはどこまで調査に踏み込むのか。この記事では約25項目のチェックだが、実習生と面談して、事実関係を精査しないと実態を把握できない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。