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<地銀>“地域のエリート”を独占採用してきた袋小路

来年4月入社予定の学生を対象とする採用活動が終盤戦を迎えている。国内経済の改善を背景に企業が採用を積極化させており、引き続き、売り手市場の様相を呈しているという。そうしたなかで、地銀業界に異変が起きている。採用活動で苦戦を強いられている地銀が少なくないからだ。金融ジャーナリスト、浪川攻さんが報告する。
最近、九州の中堅地銀のトップはこうぼやいた。「現在、第3次の募集を行っているが、いまだに内定数が採用予定人数に達しない」。期待するような学生が乏しいために内定数が予定に達しないというのではない。面接などに訪れる学生が少ないからという話である。
また、関西地方のある中堅地銀はもっと困った事態に陥った。就職活動解禁から間もなく、130人ほどの学生に事実上の内定を出してホッとしていたものの、その後、辞退者が続出し、最近では「70人強の学生が残っているだけ」になってしまった。そこで、再び、採用活動を本格化させているという。
(毎日新聞 10月9日)

地方銀行は地元経済界のリーダーだが、むかしから支店勤務の行員は地べたを這うような日々を送っている。1990年代、福岡県の地銀本部の営業企画部幹部に同行して、4カ所の支店を訪問したことがある。
当時は不動産バブルの崩壊直後で、多くの銀行が不良債権の回収に四苦八苦していた。どの支店長も地方のエリートという風ではなく、顔から生気が失せていた。その日の夜、会食の席で、同行した幹部は「地銀の支店長は疲れ切っていますよ。不良債権の回収なんて後ろ向きな仕事でしょう?いくら回収しても虚しいんじゃないかな」と口にした。
この幹部はビジネスマッチングに自行の活路を見出そうと試みていたが、支店長が動かなければいっこうに進まない。当の支店長にとっては不良債権の回収が最優先事項で、ビジネスマッチングどころではなかったのだ。
いまの地銀はどうなのか。低金利政策の継続で信用創造ができなければ、スルガ銀行のような暴挙も誘発されやすい。たとえ給与水準が高くとも、現状では、学生がワクワクするような魅力には乏しい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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