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転職で給料増 最高に迫る

厚生労働省が9日発表した2017年の雇用動向調査によると、転職に伴って賃金が増加した人の比率は36.2%となり、前年から0.9ポイント上昇した。比較可能な04年以降で2番目に高い水準だ。深刻な人手不足で売り手市場といわれるなか、よりよい労働条件を求めて転職する動きが強まっている状況が浮かぶ。
賃金が増えた人の内訳をみると、「1割以上増加した」という人は2.6ポイント増えて25.7%と、最高を記録した。年代別にみると、増加したのは19歳以下(53.9%)など若い世代のほか、35~39歳でも48.2%と高水準となっている。かねて35歳が転職の限界とされてきたが、年齢が上がっても好条件を求めて転職しやすくなっている。一方で、転職によって賃金が減少した人は1.1ポイント減って33%だった。
(日本経済新聞 8月10日)

厚生労働省の調査で転職によって賃金が増加した人の比率が増えたというが、賃金に釣られて転職する人はどれだけいるだろうか。転職の動機はキャリアアップやキャリアチェンジ、あるいは組織風土との不一致、人間関係の悪化、会社の先行きなどで、賃金は生活設計に支障をきたすほど低くない限り、おもな動機ではないだろう。

ただ、雇用側には、求職者に対して前職以上の賃金を提示しないと採用できないという切迫感が付きまとっている。とくに中堅社員や幹部社員の手薄な企業は、社内の賃金規定を適用すれば賃下げになってしまう求職者に対しては、調整手当などを設けて賃上げに導いているのかもしれない。
これまでは35歳を過ぎれば転職によって賃金は下がるのが通例だった。雇用側が求職者の足元を見ていたフシもある。だが、これからは求職者が求人側の足元を見る傾向も強くなっていくに違いない。

相手の足元を見る行為には嫌らしさが透けて見えるが、採用も取り引きである以上やむをえない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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