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残業の賃金不払い446億円 1年で319億円の異常な急増

残業などの割増賃金を支払っていない企業に対し、労働基準監督署が是正指導した結果、平成29年度は総額約446億円が労働者に支払われたことが、10日公表された厚生労働省の調査で分かった。前年度は約127億円で、1年間で319億円の急増。過去最高の数値となった背景には、「働き方改革」が影響しているという。
厚労省によると、割増賃金を支払わなかった企業(1企業で合計100万円以上の不払いが対象)は1870(前年度比521増)で、対象労働者は20万5235人(同10万7257人増)と、いずれも過去最多を更新。割増賃金の不払い総額はこの10年間、120億円前後で推移しているが、29年度は異常な急増値を示した。
厚労省によると、働き方改革で、残業や賃金の見直しが急速に拡大し、企業の改善の意識が高まっている。監督指導の対象となった企業では、タイムカードやパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか確認するなど、対策が行われているという。
(産経新聞 8月10日)

働き方改革は労務管理体系の仕組み改革にとどまって、会社の社員の関係を問い直すまでに至らなければ、改革された人事制度も業務多忙を理由に形骸化しかねない。たとえば研修は就労ではないという理由から、研修時間を勤務時間にカウントすることに抵抗をもつ経営者は、いまもなお少なくない。
そもそも働き方改革が産業界にどれだけ浸透しても、(社員は会社に奉仕すべき僕である)と割り切っている企業は、労務管理体系を是正しても運用に至るかどうかはわからない。あくまでポーズを示すにとどまるのだろう。
有力な社員が次々に退職したり、ブラック企業体質の風評が広がって採用ができなかったりするなど実害を被らない限り、就労環境の改善に本腰を入れないのではないか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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