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相次ぐ副業導入、企業はどう生かす?

大手企業による副業制度の導入が相次いでいる。通信事業会社のソフトバンクや消費財メーカーのユニ・チャームなどが副業制度を取り入れており、業界を超えて副業解禁への動きが広がっている。
社員のさらなる成長を目指してユニ・チャームが副業制度を始めてから、約1カ月。社員からは「どんな業務をしてよいのか、ボランティアはどうなのか、時間管理はどのようにするのか」など10件程の問い合わせが来ているという。
入社4年目以上の正社員が対象で、対象者は1500人。ホームヘルパーやキャリアカウンセラー、国家資格などを生かした副業を想定し、個人の技術向上や成長につながる副業が対象だ。
異なる環境で新たな技術や専門性を身につけたり、能力を発揮する機会や人脈を広げる機会を得たりすることで社員の成長を支援する。就業時間外や休日を副業可能とし、健康管理の観点から24時以降の勤務は禁止だ。(ニュースイッチ 4月27日)

 副業の解禁が進めば、会社員は給与所得者でありながら個人事業主に近づいていく。勤務先との関係は大学教員のようになっていくだろうが、この関係に対応できず、組織依存型を望む社員も多いのではないか。組織への所属は安心感を担保するので、それは仕方がない。

 気になるのは企業のホンネだ。報道で確認する限り、副業を解禁する目的は、おしなべて異質な経験による新たなスキルの取得である。確かにそうなのだろうが、中小企業には賃上げができないから、不足分は副業でカバーしてほしいと社員に申し出る例もある。

 東京五輪後に景気が悪化して賃上げがかなわなくなれば、人件費の抑制と副業の解禁をセットにする企業が出てくるかもしれない。副業の収入が本業を上回る社員が珍しくなくなれば、本業と副業の区分けも曖昧になっていくだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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