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技能実習生の除染作業、法相「一律に認めない」

上川法相は16日の閣議後記者会見で、外国人技能実習制度で来日した技能実習生が東京電力福島第一原発事故に伴う除染作業に従事していた問題について、「技能実習制度にそぐわないことから、除染作業を一律に認めないことにした」と発表した。
同制度で来日したベトナム人男性が、2015年10月から約5か月間、福島県郡山市で除染作業に従事していたことが明らかになり、問題になっていた。法務省は実態調査を行い、類似の事案がないかを確認する。
(読売新聞 3月16日)

外国人技能実習制度の趣旨は、日本での技能実習を経て母国に帰って産業発展に寄与してもらうことである。日本側の人手不足対策ではない。技能実習生は労働者でなく、就労先も「実習実施者」と制度名が付けられているほどだ。

技能実習生に除染作業に従事させるのなら、除染技術を習得して、母国に除染技術を普及させるシナリオがなければ技能実習制度が成り立たない。
だが、この制度を利用する実習実施者にとって、技能移転はタテマエで、ホンネは人手不足対策である。わかり切った現実だ。それでも制度の趣旨を露骨に無視されては、政府の立場が危うくなりかねない。

昨年11月の制度改正で新たに対象職種に加わった介護職について、厚生労働省は「2025年に向けた介護人材に確保においては、国内人材の確保対策を充実・強化していくことが基本」と釘を刺した。
介護人材を国内では確保できない現状を厚労省が知らないはずはない。だが、制度を維持する以上、タテマエを貫かざるをえないのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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