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電機、残業上限先取り 年720間労使で交渉

2018年春季労使交渉の主要テーマである働き方改革で、残業削減など長時間労働の是正(総合2面きょうのことば)が焦点となってきた。主要電機の労働組合は年内にも残業時間の上限を年720時間に定めるよう求めた。19年4月の施行を目指す政府の残業規制を先取りし、従業員の生産性向上を目指す。残業削減は社員の所得を減らす可能性もある。個人消費への悪影響を防ぐには、働き方改革と賃上げを合わせた議論が重要となる。
長時間労働の是正を巡っては、政府が国会に提出する働き方改革関連法案に、繁忙期を含む年720時間の残業規制を盛り込む。大企業の規制は19年4月に施行するとしている。
日立製作所の労組は、納期逼迫など繁忙期での年960時間の残業上限を、720時間に引き下げるように求めた。富士通は繁忙期を含む残業時間を月100時間から80時間とすることで労使協議し、「今後の法改正に先駆けて対応すべく、協議は前向きに進んでいる」(関係者)。
(日本経済新聞 3月9日)

厚生労働省のオウンゴールで法案化が見送られた裁量労働制は、時間外勤務手当の廃止によって内部留保の強化に寄与する。タテマエは生産性向上だが、ホンネは内部留保の強化ではないのか。
裁量労働制が導入されれば、社員の懐が寂しくなり、会社の懐は潤う。消費増税が施行された途端、個人消費が冷え込むのは明らかで、五輪特需が過ぎれば、またしても失われた時代が長らくつづいてゆく。
しかも多くの場合、会社員に労働に対する裁量権など与えられていない。現に裁量労働制を導入している会社の社員は“名ばかり裁量”によって長時間労働を強いられている。働き方改革の実態は、定額・働かせ放題という“働かせ方改革”である。労働時間に際限がなくなり、“健康被害拡大改革”にも転じかねない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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