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報われぬ長時間労働、教員悲鳴 「辞めるか」毎年綱渡り

「学校で見ているとね、先生に向いているな、先生になってほしいな、と思う生徒に出会うんですよ」。50代の男性高校教師がこぼす。「でも今の現場の難しさを考えると『先生を目指してみないか』とは言えない」。頼もしい“後輩”になるかもしれない生徒への思いは胸にしまい込んでいる。
 
福井県教委が2016年度に行った調査で、休憩1時間を除く平均勤務時間は中学校が最長の11時間22分、小学校は10時間28分、高校は10時間7分、特別支援学校は9時間18分だった。17年度の調査では、休日の部活動指導などで1カ月の超過勤務が218時間に上った県立高の教員がいた。
 
18年度に小学校、19年度に中学校で道徳が「特別な教科」となり、県内では小学校の英語教育も18年度から先行導入される。次期学習指導要領への対応も必要で教員の負担は増すばかりだ。昨年の12月県議会で東村健治県教育長は「(教員から)生徒に向き合う時間が取れないと聞いている」と認めた。
(福井新聞オンライン 1月30日)

教員の勤務時間を削減する目的で、部活動の顧問を外部の専門家に委託する傾向もあるが、この取り組みには問題もあるという。公立中学校の元校長は、こんな意見を聞かせてくれた。

「部活動は教育の一環であり、街のスポーツクラブとは違います。外部の専門家は専門技術には詳しいのですが、学校教育を知らない人が多くて、しかも部員の学校生活や家庭生活も把握していません。部員一人ひとりの背景を把握していないため、技術偏重の指導に傾きがちで、その結果、過度なスパルタ指導に陥りやすい面があります」
 
かつて教員は医師と並んで聖職と扱われた。生徒に奉仕する仕事であるだけに、役務を提供する側の都合だけで勤務時間を設定しにくいが、教員も生活者であり、労働者である。病院が医師の長時間勤務削減に向け、患者や患者家族からの理解を求める動きに入ったように、学校も保護者に教員の勤務実態を説明して、業務量の見直しを図る動きに向かうのだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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