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出戻り社員を認める風潮

一度、辞めた社員を企業が再び雇用する「出戻り」を認める風潮が高まっている。その象徴の一つが、日本マイクロソフト会長だった樋口泰行氏のパナソニック経営層への“出戻り”だ。
新卒採用、年功序列、終身雇用の3点セットが前提の会社では、一度辞めれば「二度と敷居をまたげない」という企業文化も珍しくはなかったが、意識は確実に変わりつつある。
(中略)
「もともと縁があって一緒に働いた仲間なのだから、門戸を閉ざす理由はありません」
エン・ジャパン人財戦略室マネージャーの豊田雄大さんは、出戻り社員についてそう言う。

同社は3年前から「Welcome back制度」を導入。育児や配偶者転勤といったライフイベントはもちろん、転職や起業などによる離職者も含め、年3人程度は“出戻り社員”を雇用している。年代は20代半ばから30代半ばの働き盛りだ。 豊田さんは、出戻り社員のメリットとして、以下を挙げる。

1. 理念への共感があり、即戦力になる
2. 他を見たからこそ、自社の良さに改めて気づくなど、ずっと同じ会社にいては見えないことが見えている。
3. そうしたことが周囲にも波及して、いい意味でインフルエンサーになりやすい
(BUSINESS INSIDER 11月24日)

再入社した社員は他流試合を経験していることが強みだ。さらに“自社の常識=社会の非常識”という組織の論理に埋没しない視野を身につけていれば、貴重な戦力になりうる。

理念教育などをことのほか重視する会社では、社員の求心力が高まる一方で、少なからずの社員が視野狭窄に傾きがちな一面もある。この傾向はとくに急成長中のベンチャー企業に多く見られ、新卒採用を重視するのも、自社の価値観に染めやすいからだ。

染まった社員は好調時には力を発揮するが、ひとたびトラブルに直面すると、唯我独尊に傾いた文化で育成されただけに、社会との距離感をつかめずに難儀してしまう。他流試合を経験した再入社組は、会社の足腰を強化する戦力として貴重である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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