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政府が年度内に副業解禁へ

新卒から定年まで生涯1社で働く終身雇用の考え方が大きく変わろうとしている。政府は年度内にも、副業・兼業の事実上の解禁に踏み切る。国がつくるモデル就業規則の副業禁止規定を改定すると同時に、長時間労働を招かないよう労働時間や健康管理の指針を盛り込んだガイドラインの策定にすでに着手。来春、公開する見込みだ。
 
今年2017年はソフトバンクやディー・エヌ・エー(DeNA)といった大手企業も副業解禁を発表するなど、これまでになく複業キャリアに注目が集まっている。一方で8割以上の企業が社員に副業を認めていないのが現状だ。ここにきて政府が副業・兼業容認へ舵を切ることで、多くの企業や働き手に影響が予想される。2018年は事実上、日本の複業キャリア時代の幕開けとなりそうだ。

政府が副業容認に転じる背景には、急速に進む少子高齢化による労働力不足への危機感がある。人口減少時代を迎え、企業サイドでは優秀な人材の獲得・流出防止や人手不足対策につなげたい考えだ。
(BUSINESS INSIDER 11月13日)

副業問題で困っているのは外国人技能実習生たちだ。外国人技能実習制度の趣旨は技能移転であり、日本で技能を身に着けて、帰国後は母国の発展に貢献することにあるが、実態は日本企業の人手不足解消策である。業務の大半は現場作業で、劣悪な就労環境や賃金未払いなどが国際的にも問題視され、国連、ILO、米国国務省などがたびたび人権問題として警告してきた。

あまり報じられていないが、実習期間(3年)中は、転職と副業が禁じられている。実習という大義名分で来日している以上、副業や転職を自由にさせたら、実習は成り立たない。だが、劣悪な就労から退職、さらには失踪するケースが続出している。実習生を受け入れる日本側の監理団体が転職先を紹介する仕組みだが、転職先が決まるまでの間、副業ができないのだ。

この11月に新技能実習制度が施行され、政府は実習生の保護体制を強化するという方針を示しているが、転職と副業の規制が緩和されないと、この制度は行き詰まるのではないか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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