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労働時間把握は「義務」明記、安衛法規則改正へ

過労死を防ぐため、厚生労働省は、労働安全衛生法(安衛法)施行規則を改正し、従業員の労働時間を適切に把握することを企業などの義務として明記する方針を固めた。
 
政府は、時間外労働の上限規制を含む「働き方改革関連法案」を秋の臨時国会に提出する予定。関連法施行までに安衛法施行規則を改正する。
 
安衛法は働く人の健康を守るための法律。時間外労働が月100時間を超えた人が申し出た場合、医師の面接指導を事業者に義務づけるなど、労働時間の把握を前提とした仕組みを定めている。ただ、取り組みが不十分な企業もあるという。
 
そこで、安衛法施行規則に、労働時間の把握について「客観的で適切な方法で行わなければならない」などの文言を盛り込む。パソコンの使用時間やIC(集積回路)カードによる出退勤時間の記録を想定する。管理監督者を含めた全ての労働者を対象にする。
(読売新聞 8月6日)

どんな制度を創設しても、ルールどおりに運用されなければ新制度は無用の長物である。

都内の公立通学校の教員によると「毎月の残業時間は100時間を超えていますが、正確に申告すると教育委員会から指導が入るので、全員が80時間程度に削減して申告しています」という。

長時間労働問題がこれだけ焦点になっていても、いっこうに現場は反応しない。むしろ確信犯に走っている。労働安全衛生法の施行規則を改めたところで、当局が運用の実態を監督しない限り、長時間労働問題は解消に向かわない。

職場の管理責任者は、あの手この手と手段を尽くして“合法性”の担保に奔走してゆく。民間企業なら転職という選択肢があるが、公務員は終身雇用を前提に就労しているため、理不尽な労務管理にも忍従してしまう。退職金や年金という後半生の見返りに期待をして、忍従しているのかもしれないが、後半生の見返りが約束される保障はない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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