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違法残業1万272カ所 厚労省が是正勧告

厚生労働省は26日、月80時間超の時間外労働が疑われる2万3915事業所のうち、43%に当たる1万272事業所で違法な時間外労働を確認し、是正勧告を行ったとする平成28年度の監督指導結果を発表した。月100時間超の時間外労働が疑われる事業所を対象にした前年度に比べ、監督指導の数は大幅に増えた。
 
厚労省によると、違法な時間外労働があった事業所のうち“過労死ライン”とされる月80時間を超えていたのは7890カ所。月200時間を超えていた事業所も236カ所あった。また、残業代などの賃金不払いが1478カ所、健康診断未実施など健康障害防止措置の不十分が2355カ所で確認された。製造業や運輸交通業で違法な時間外労働が多かった。
 
厚労省は「指導により是正されても違反を繰り返す恐れがあり、粘り強く指導していく」としている。
(産経新聞 7月26日)

この問題は長引く。滅私奉公の文化に成果主義人事が導入され、長時間労働に対しては、自発的服従を選ぶことが自然な働き方として定着しきっている。政府が働き改革を打ち上げても、勤め人の身体に染み付いた長時間労働体質は、そう簡単に改善されない。

この記事によると、厚生労働省は「指導により是正されても違反を繰り返す恐れがあり、粘り強く指導していく」というが、企業が身構える行政機関は、所轄の機関と税務署である。医療機関や介護事業者など厚労省の許認可を受けて営んでいるところは、厚労省の指導に緊張感をもって対応するが、厚労省の所管外の企業が、はたしてどこまで従うだろうか。
 
厚労省も、もぐら叩きを強いられているようで、やがて疲れてしまうだろう。強制力を行使できる仕組みを設けないと、いっこうに違法残業問題は解決しない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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