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「クズ」罵声の日々、社員自殺 法規制なきパワハラ

2015年1月28日、ヤマト運輸の長野県内の営業所で宅配ドライバーをしていた男性が行方不明になり、6日後に県内で遺体で見つかった。46歳だった。1月末ごろに自ら命を絶ったとみられる。

「25年もヤマトで働いて頑張ってきたのに、俺のやってきたことは何だったんだろう」。失踪の前日、男性は妻に涙目でそう繰り返したという。
 
遺族の代理人の鏡味(かがみ)聖善(まさよし)弁護士によると、男性は営業所をまとめる「センター長」からパワーハラスメント(パワハラ)を受けていた形跡があった。
 
14年5月10日と同12日、男性は妻の助言を受けてセンター長との会話をスマートフォンで録音していた。

(中略)
 
同県内の労働基準監督署は16年3月、「『殺してえ』などといった発言を継続的に受けていたことは事実と認められる」として労災認定した。そうした叱責の結果、14年9月下旬ごろにはうつ病を発症し、自殺に至ったと判断した。
(朝日新聞デジタル 6月25日)

 
ヤマト運輸の創業者、小倉昌男氏が健在なら、この事態に対して、労働基準監督署の判断を待たずに加害者と部門責任者に厳罰を下すのではないか。
 
「パワハラは言い訳ができるが、セクハラは言い訳ができない」という意見を聞いたことがある。パワハラは行き過ぎた指導という言い訳ができるというのだが、この記事にある事案は指導の範疇を超えている。
 
ある心理学者によると、パワハラの加害者は他人に共感する資質に欠け、職場内でパワハラ防止教育を施しても、なかなか矯正できないという。これだけパワハラ問題が世上を賑わせているのに件数が増加しているのは、共感力に欠けた人間が排出される時代背景があるのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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