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電通本社を略式起訴へ、幹部は不起訴…違法残業

大手広告会社・電通(東京)による違法残業事件で、東京地検は、独自捜査で新たに東京本社の幹部数人の労働基準法違反を認定した上で、同法の両罰規定に基づき、法人としての同社を近く略式起訴することが関係者への取材でわかった。
 
地検が任意で事情聴取した山本敏博社長(59)が、法人としての責任を認めていることも判明した。東京労働局が書類送検した男性幹部1人を含む本社の幹部数人は不起訴(起訴猶予)となる見通し。
 
一方、4月に同容疑で書類送検された関西(大阪市)、中部(名古屋市)、京都(京都市)の3支社の事件について、大阪、名古屋、京都の3地検は東京地検に事件を移送せず、法人と3支社幹部をいずれも不起訴(起訴猶予)とするとみられる。政府の働き方改革の議論にも大きな影響を与えた電通事件の捜査は、本社の違反だけが処罰対象となり、終結する。
(読売新聞 6月23日)

責任の所在が不明確なまま捜査が終結した。灰色決着である。働き改革を促した電通問題のインパクトは大きかったが、処罰対象は法人だけという前例になってしまうと、再発の抑止効果も期待できず、いつ同様の問題が再燃しないとも限らない。労働基準法を犯した個人の責任を特定して、然るべき措置を下さないのは無責任体制の容認とも受け取れる。
 
法人を責任主体と見なすのは法的には可能でも、実態として法人は責任主体になりえない。責任主体は代表者なのか、当該事案の統括者なのか、担当者なのか。該当者がいないはずはない。
 
働き方改革をめぐっては、長時間労働の是正によって産業界の活力低下を懸念する意見もあるが、社員が心身を病むよりはマシだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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