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電通9部局、残業過少申告 検察が立件方針

広告大手の電通が社員に違法な長時間労働をさせていた労働基準法違反事件で、厚生労働省は25日、長時間労働で自殺した高橋まつりさん(当時24)が在籍したインターネット広告部門など本社の9部局12人の社員が残業時間を過少申告していたと発表した。関西(大阪市)、中部(名古屋市)、京都(京都市)の3支社の社員3人と法人としての電通も書類送検した。

検察は勤務の過少申告が電通全体に広がっていたとみて、法人としての電通を労働基準法違反(時間外労働)容疑で立件する方針で、詰めの捜査を進める。一方、厚労省は本社の労務担当役員の刑事責任についても検討したが、個別の長時間労働の認識を裏付ける証拠が得られなかったとして、書類送検を見送った。

厚労省によると、この日の送検の容疑は、3支社の社員3人が2015~16年、計5人の部下に対し、計22回にわたって労使協定で決めた1日あたりの残業時間の上限(5時間半)を最大で6時間超えて働かせた疑いがあるとしている。
(朝日新聞デジタル 4月26日)

電通の3支社と幹部に対する書類送検だけでは、就労改革は進まないだろう。電通だけでなく、この捜査を一罰百戒として産業界全体に改革を波及させることも難しい。起訴されるかどうか、略式起訴で幕引きされるのか。そのいかんに改革は左右される。

朝日新聞デジタルの他の記事(4月26日付)には、電通の山本敏博社長が「厚労省の聴取に対し、高橋さんらについて労使が決めた上限を超えた残業があったことを認めた。会社として『もっと取るべき対策があった』などと話した」と報じられた。

電通や幹部社員にとってダメージの少ない結果になって、電通が幕引きを図るようでは元の木阿弥だが、組織体質の変革は容易でない。どの業界にも昔気質は残っていて、これが払拭されない限り、体質の変革には至らない。思い切った世代交代を行なう以外にないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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