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電通3支社を書類送検へ 厚労省 過労死事件の捜査終了

大手広告会社の電通が社員に違法な長時間労働をさせていた事件で、厚生労働省が近く、労働基準法違反容疑で3支社(大阪、名古屋、京都)の幹部や法人としての同社を書類送検する方針を固めたことが13日、分かった。新入社員の高橋まつりさん=当時(24)=の過労自殺の発覚をきっかけにした事件は、これで厚労省側の捜査は終了し、検察の手に移る。

高橋さんの事件をめぐっては昨年末、労使協定で定められた残業時間を超えて違法な残業を強いていたとして、直属の上司1人と法人としての電通を労基法違反容疑で書類送検。厚労省はさらに上層部の関与の有無を調べていたが、立件は困難と判断したとみられる。

3支社については、厚労省が地元の労働基準監督署とともに昨年10月、「臨検」と呼ばれる任意の立ち入り調査を実施。捜査関係者によると、同11月には強制捜査に移行し、社員の出入りを記録する「入退館記録」などを調べ、勤務時間を過少申告した社員が30人以上いることを確認したという。
(産経新聞 4月14日)

さる4月12日に電通で社長以下の幹部を対象に実施された研究会で、高橋まつりさんの母親は「軍隊のような社風をなくしてほしい」と話したという。戦前の「欲しがりません、勝つまでは」「滅私奉公」という思考が企業に感染すると、目標達成までは寝食を忘れて働きつづけ、労働基準法など視野に入らず、あるいは入ってもタテマエとして無視を決め込むようになる。

こうした悪弊は体育会系と称される社風を好む企業に多く見られる。体育会系という体質には元気のよさも含まれるから、一概に否定はできないが、暴走の芽を宿していることに目を向けておきたい。

電通は、楽天が運営する「みんなの就職活動日記」の2018年卒の就職人気企業ランキングで、昨年が1位だったが、今回は23位に後退した。過労死問題や是正勧告に従わなかった悪歴が原因だろうが、電通の体質改善は、業績急落や若手社員の退職続出などが発生しない限り、難しいのではないか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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