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就活市場で電通ブランド健在

平成30年卒の大学生らの就職活動が3月1日、始まった。政府を挙げて働き方改革が進み学生優位の売り手市場が続く中、学生の意識は「働きやすさ」を求める方向へと大きくシフトしているとされる。そんな中、新入社員だった高橋まつりさんの過労死事件が大きく報じられた電通を志望する学生は何を望むのか。各地の合同企業説明会を訪れた学生に聞いてみた。

「過労死? 特に気にならないですね」

そう語ったのは、広告業界が第一志望という都内の私立大3年の男子学生(21)だ。学生は合同説明会の一角にあった電通のブースを訪問し、改めて「広告業界への興味が高まった」と話す。学生によると、電通側は冒頭、違法な長時間労働で幹部社員が書類送検された件に触れ、社内で改革を進めている最中だと説明したという。「(ブースに)来てくれてありがとうございます、というようなことも言っていたが、話の内容は仕事の紹介がメーンで、質問も自由にできた」
(産経新聞 3月6日)

過労死問題によって電通の業績が急落し、給与も大幅にダウンしたのなら就活人気は下がるだろうが、電通が就労環境の改善に取り組んでいることから、むしろ志望者は増えるのではないか。

いくつかの調査によると、学生が企業を選択するさいにもっとも関心をもつのが福利厚生だという。調査の仕方にもよるので、この結果がどこまで妥当かどうかはわからないが、中高年世代には学生の先行きを案ずる向きも多いようだ。「福利厚生をアテにして入社してくるのは筋違い」と嘆く人事担当者もいるが、学生の志向性を変えてしまったのは企業側の問題である。

これだけブラック企業問題が噴出しつづけると、働き甲斐にあふれて実力が身につく会社かどうかよりも、心身が破壊されるかどうかに関心が向いてしまうのはやむをえない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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