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上場担う人材 引く手あまた

新規株式公開(IPO)の知識や経験を持つ人材の求人が増えている。米大統領選後の株価上昇で、ベンチャー企業を中心にIPOの意欲が高まり、法務や財務、経理にたけた人材の引き合いが強い。人材紹介・派遣の市場では派遣時給が上昇傾向にある。

人材紹介のジェイエイシーリクルートメントは企業からIPO関連の中途採用を引き受けている。求人件数は前年同期の1.5倍に上る。「海外展開や企業買収に備え、IPOを検討する企業が幅広い業界で増えている」(早川徳二エグゼクティブビジョン部長)

株式公開を目指す企業では、内部統制に詳しい人材のほか、財務戦略の立案や投資家への説明能力に秀でた経験者への需要が高い。
(日本経済新聞 2月27日)

法務、財務、IRなどIPO要員は、育てるのではなく、見つける職種である。経験者を採用し、その下で若手社員を鍛え上げて一人前にする以外にない。

ところで、IPOを目指す企業が増えているなかで、国が成長産業に育成したがっている介護業界には、あえてIPOを目指さないという優良企業がある。2017年度の年間売上高32億円、営業利益2億5000万円を見込むこの企業は、訪問看護ステーションを多店舗展開している。

なぜIPOを目指さないのか。それは介護事業が全国一律の公定価格で成り立っているからだ。公定価格のもとで株主配当を重視すれば、労働分配率を下げざるをえなくなり、社員の給与がIPO前よりも低くなりかねない。社員が続々と退職してしまうことは必至である。

IPOを目指し、果たす企業が次々に登場しないと成長産業への道は狭まってしまうだろうが、公定価格で成り立つ制度ビジネスであるだけに、突破口を見出すのは難しい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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