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自己啓発の学習も労働時間 厚労省が指針

厚生労働省は、長時間労働の温床とされるサービス残業をなくすため、会社側の「暗黙の指示」で社員が自己啓発をした時間も労働時間として扱うことなどを求めた指針を作成した。指針の作成は電通社員の過労自殺を受けて同省が昨年末に公表した緊急の長時間労働対策の一環。指針に法的拘束力はないが、同省は労働基準監督署の監督指導などを通じて企業に守るよう徹底する方針。
(中略)

指針では労働時間について「使用者の指揮命令に置かれている時間」と定義し、「使用者の明示または暗示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」との判断を示した。

具体的には、業務に必要な資格取得の勉強や語学力向上の学習など自己啓発をした時間について、「海外転勤するんだから英語を勉強しろ」などの上司からの指示がなくても、そうした状況に追い込まれる暗黙の指示があれば労働時間に当たるとした。
(日本経済新聞 2月4日)

教育研修は業務ではないので労働時間にカウントしないという例はよく耳にするが、業務報告をして上司から指示や指導を受ける時間も、自己啓発だから労働時間にカウントしないという極端な例もある。

しかし社員にとっては、会社の指揮下に置かれている時間に変わりない。たとえ研修への参加が任意でも、参加しないとマズイという空気があれば参加せざるをえない。その空気をつくっているのは会社であり、上司である。

自己啓発を労働時間にカウントしない慣行を改めないと、長時間労働の抑制を目的に、巧妙な理由をつけて業務を自己啓発にすり替え、就労実態は何も変わらないという事態になりかねない。その意味で、逃げ道を塞いだ厚労省の指針は大きな意味をもつ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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