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<広告業界>残業減へ動く 博報堂、アサツーなど

広告最大手・電通の新入社員過労自殺を契機に、広告業界が「働き方改革」に取り組み始めている。業界2位の大手・博報堂は今月、残業を原則午後10時までとする社内ルールを定めた。やむを得ず10時以降も残業する場合は上司への事前申請を義務付けている。

同社広報室によると、試行段階で期限は設けていないが「実質的にはルール化。健康的な働き方は社会的な要請でもあり、自主的にやってみようということになった」と説明する。今後、午後10時以降の残業申請件数など実態を検証し、改善につなげていく方針だ。

業界3位のアサツーディ・ケイは2014年に週1回の「ノー残業デー」を設けた。人事部員が手作りの看板を持って各職場を回り、午後7時以前の退社を促している。
(中略)

だが、ある電通社員は「午後10時以降は仕事のメールも届かなくなり、顧客も無理を言わなくなったが、仕事量は減らない。代わりに、早朝に出勤する日が増えた」と明かす。長時間労働抑制の道のりは長そうだ。
(毎日新聞 1月24日)

長時間労働問題を解消するには仕事量の納期の見直しが必須だが、これには取引先との連携が前提となる。自社内だけで残業時間の削減に取り組んでも、この記事に書かれた電通社員のように早朝出勤に切り替えざるをえず、労働時間の削減には至らない。

仕事量や納期が現状のまま残業時間を限定されると、どうなるのか。たとえば前倒しされた終業時間の適用が本社に限られた場合、終業を過ぎたら、パソコン持参で退社して子会社に移動し、会議室などで仕事をつづけるという事態にもなりかねない。

早朝出勤や社外労働の実態を把握したうえで、労働時間の削減と仕事の見直しに取り組まない限り、“隠れ時間外労働”が撲滅されない。この記事は「長時間労働抑制の道のりは長そうだ」と指摘しているが、そのとおりである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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