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ソニーの介護、従業員目線で人材不足と無縁

東京・世田谷区の祖師ヶ谷大蔵駅近くに2016年4月、介護付有料老人ホームがオープンした。「ソナーレ祖師ヶ谷大蔵」。ソニーグループが自ら開設した初めての有料老人ホームである。

立ち上げに当たり、同社グループの介護事業を担うソニー・ライフケアは2015年7月から、職員の採用募集を始めた。一般社員やパートを含め、募集定員は34人。ただでさえ介護現場の人材不足が叫ばれる環境下、世田谷区は大手介護事業者の牙城。「人材が集まらないのでは、と行政からもストレートに質問された」とソニー・ライフケア 代表取締役社長の出井学氏は明かす。

ところが、その懸念は杞憂に終わった。ふたを開けてみると定員の3倍、101人からの応募があったのだ。

ソニーブランドゆえか。そうではない、という。介護パート職種を例に挙げれば「ソニーグループだから、という入社動機は5%にすぎなかった。ソニーブランドを意識していた人はほとんどいない」(出井氏)。  

では何が功を奏したのか。「介護に対する考え方、商品企画、そして従業員に対する目線が評価された」(出井氏)。半年を越える採用期間を確保したことや、採用活動費を惜しまなかったことも大きい。だが決め手となったのは、従業員とのマッチングを重視した商品企画や面談にあったと出井氏は強調する。
(日経デジタルヘルス 8月5日)

介護職を採用活動は応募者への訴求方法で応募状況が大きく違ってくる。ある訪問看護ステーションは「これからニーズの増える訪問看護の仕事をしませんか?」という呼びかけに効果がなかったため、アプローチの仕方を変えた。「私たちといっしょに地域を支えませんか?」と呼びかけたのだ。すると応募者が急増したという。

しかし、新卒採用で社会貢献を訴求しても、当たり前すぎて反応が乏しいようだ。ある社会福祉法人事務長は「いまどき、どんな業界でも社会貢献を謳う時代です。介護事業者が社会貢献を訴えても“福祉業界なのだから社会貢献は当然だろう”と学生の心に響きません」と指摘する。では、どんな方法が効果的なのか。

事務長によると「法人のブランディングに取り組んで、職場のワクワク感や、自分が成長できるイメージをリアルにアピールすることです。一般企業と同じですよ」。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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