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ブラック求人、罰則強化へ 厚労省が改正法案提出方針

厚生労働省は、実際とは異なる虚偽の賃金や待遇を示して求人をした企業に対する罰則を強化する方針を決めた。好条件に見せかけて求人する手口への規制も強める。13日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の職業安定分科会でこうした方針が了承された。職業安定法の改正案を来年の通常国会に提出する方針だ。

現行の職業安定法では、チラシやネットの広告で虚偽の求人をした企業や担当者に対しては、懲役6カ月以下または罰金30万円以下の罰則がある。しかし、公共職業安定所(ハローワーク)や民間の職業紹介会社を通じた求人では、虚偽の条件の仕事をあっせんした紹介会社への罰則はあるが、求人を出した企業に対する罰則はない。これを改め、求人を出した企業も罰則の対象とする。

また、求人で提示する給与について、残業代を除いた明確な金額を示すよう企業に義務付ける。

(中略)

違法な長時間労働を繰り返したり、セクハラを放置したりして社名が公表された企業の求人申し込みをハローワークが拒否できる仕組みも強化する。新卒の求人では現在も拒否できるが、すべての求人に広げる。
(朝日新聞デジタル 12月13日)

電通への強制捜査を契機に、労働基準監督署による是正勧告を軽視する風潮が改まりつつある。ブラック求人問題も当局が摘発し、社名を公表して、相当な罰則を下さない限り、企業の姿勢は改まらないだろう。

求職者は立場が弱く、雇用条件について質せば労務トラブルの火種と見なされかねないと萎縮して、たとえ疑問に思っても黙認せざるをえないのが通例だ。企業側も求職者の足元を見て、悪質な企業は虚偽の雇用条件を記載する。

入社後に求人票の雇用条件が虚偽と判明しても、おおかたは黙認してしまう。かりに試用期間内に指摘すれば(適性なし)と評価され、試用期間終了とともに退職を強いられかねない。転職暦が増えれば、その後の求職活動にマイナスになる。この点も企業は見透かしている。

おそらく事実と異なる求人内容が指摘された企業は、記載ミスなど言い訳のシナリオを用意するはずだ。当局は問答無用で対処しないと舐められるだけである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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