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トヨタ常務逮捕に潜む多国籍人事のリスク

トヨタ自動車常務役員のジュリー・ハンプ容疑者が麻薬取締法違反容疑で18日に逮捕された事件は、人材流動化が進む日本企業に新たな課題を突きつけた。グローバル化が進む中で競争力を高めるには国内外の優秀な人材の確保は不可欠。ただ、選択を誤ればブランドイメージを傷つける事態になりかねないリスクが潜むことを示した。
「日本企業は性善説に立っている。採用にあたって踏み込んだ調査をする企業は少ないのかもしれない」。ハンプ容疑者の逮捕を受けて、自動車大手の関係者はこう語った。この会社は海外拠点で人事トラブルが起きたのを受けて、コンサルタント会社に完全に委託していた現地採用の方法を自社の現地法人が調査して行う方式に改める方向だ。

ハンプ容疑者は4月にトヨタ初の女性役員に就任したばかり。米ゼネラル・モーターズ(GM)などを経てトヨタの北米子会社に入社して3年足らずでの抜擢(ばってき)だったが、トヨタは登用の際に行った調査の内容を明らかにしていない。
(SankeiBiz 6月29日)

個人情報保護法が施行されて以降、興信所にはめっきり調査依頼が減ってしまい、浮気調査や債務調査などでしのいでいる例が少なくないという。あるベテラン調査マンは内情を語る。

「終身雇用の崩壊で定年まで雇用するという縛りがなくなったことや、90年代以降のインターネットの普及で情報がタダで取れるようになったことも、我々の商売には大きなダメージになりました。たとえばスカウト人事の場合、対象者の活動実績などはネットで検索できるようになったので、調査依頼が必要なくなったのです」。

だが、トヨタ自動車の常務逮捕を契機に、役職にもよるだろうが、スカウト人事では候補者の“身体検査”が必須になっていくのではないか。とくに私的な側面については本格的な調査をかけなけなければ判明しない。当然、日本人だから身ぎれいとは限らないが――。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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