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日本電産・永守社長「リストラする企業の方がブラックだ」

――日本電産はハードワークで有名です。
「創業当初は優秀な人材を採れず、大手に対抗するには長時間働くしかなかった。上場後はある程度人を確保でき、アタマも使う『知的ハードワーキング』を掲げた。最近はグローバル化が進んだため、昨年から時間にかかわらず『できるまでやる』方針に変えた。やるべきことができれば早く帰っていい。ただ、できないのに早く帰れば競争に負けてしまう。そこは頑張ってもらうという考え方だ」
――社員の間で帰宅時間に差が出ませんか。
「今はできるだけ生産性の高い人に仕事を回し、昇進や賞与で報いるようにしている。同じ仕事をするのに能率が良く早く仕事を切り上げる人より、効率が悪く長時間働いている人に残業代が付き収入が多くなるのはおかしい。(ホワイトカラー・エグゼンプションのような)ある程度の年収になったら時間でなく成果で評価するのは正しい」
(中略)
「雇用は守る。リーマン・ショック時も誰も切らずに平均5%の賃金カットをし、その後利子を付けて返した。いいときも悪いときも分かち合うのが日本の強みだ。うちは今や電機大手のリストラの受け皿。一生懸命働いて税金も納めているのに『ブラック企業』のようにいわれるのはおかしい。リストラする方がよほどブラックではないか」(日本経済新聞 1月27日)

ハードワーク=ブラックではない。残業や休日出勤、あるいは退職強要、モラルハラスメントなどブラック認定にはさまざまな要素があるが、結局は、時間外勤務手当を正当に支払うかどうかが認定の基準になるようだ。

永守重信氏の「リストラする方がよほどブラックではないか」という主張は、雇用という社員の生命線を守っている自負の現われだろうが、この主張は正鵠を射ている。

いまや社員を物品のようにバッサ、バッサと切り捨てることに時代が麻痺してしまったが、社員を路頭に迷わせることに罪悪感を覚えない経営陣は、やがて因果応報の理で自らに災難が降りかかってくると認識したほうがよい。これは人生の帳尻のようなものだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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