Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

パワハラ自殺訴訟、会社側が控訴

1225

消火器販売などの「暁産業」(福井市)で勤務していた男性社員=当時(19)=が自殺したのは上司の暴言によるパワーハラスメント(パワハラ)が原因として男性の父親が損害賠償を求めた訴訟で、同社と当時の上司側が10日までに、原告の主張を認め約7200万円の支払いを命じた福井地裁判決を不服として、名古屋高裁金沢支部に控訴した。控訴は6日付。
同社と上司の代理人弁護士は、控訴の理由として「パワハラだと認定された23カ所の発言は指導の範囲を超えていない。仕事で注意すること自体がパワハラになってしまう。自殺との因果関係にも事実誤認がある」とした。
福井地裁は11月28日の判決で、男性は上司から言葉によるパワハラを受け、男性が手帳に書き残した「死んでしまえばいい」「辞めればいい」などの上司の発言23カ所を「典型的なパワハラ」と認定。うつ病を発症し自殺した男性に、業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されていないとし、同社と上司2人に約7200万円の支払いを命じた。
男性の父親の代理人弁護士は「遺族の願いを無視した控訴に憤りを感じる。明らかなパワハラだったと主張していく」とコメントした。(福井新聞ONLINE)

暁産業の代理人弁護士の真意は分からないが、「死んでしまえばいい」「辞めればいい」などの発言は明らかにパワハラである。自殺との因果関係の有無にかかわらず、到底、指導の範囲と認められる発言ではない。

そもそもパワハラと注意の区別はそれほど難しい問題なのか。人権について教え、考察させたうえで、発言と行動の禁止事項を明文化して遵守させればよい。加害者を服務規定や人事評価制度に基づいて処置するのは当然のことだ。

どんな職場であれ、上司は部下をひとりの人格として尊重しなければならないが、それを教えるのは会社の責務だ。パワハラの撲滅には、採用難や売上減少などの実害が生じないと真剣に取り組まないのが、おおかたの企業の現状のようだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。