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万策尽きる前にリストラで身軽になる気運

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あれから早期退職、リストラという言葉にも誰もが慣れて、終身雇用の崩壊は着実に進んでいるようにも思えます。ただ、あくまでリストラを行い、終身雇用にメスを入れたのは業績がどうしようもなく厳しい企業ばかりでした。
「3年続けて赤字に転落して、もはやリストラしか手がない」
と万策尽きての手段だったのです。可能なかぎり雇用は守りたいとの前提で、「致し方なし」というタイミングまで終身雇用を壊したくないと考える経営陣が多かったからでしょう。
ところが、状況は変わりました。戦略的に終身雇用をやめ、同時に大胆なリストラに取り組む会社が出てきています。
取材したある製造業では、5年後に工場を海外移転することに決定。現在は業績も順調ながら、国内工場で勤務している社員に対して早期退職の募集を検討中とのこと。一方で海外展開に伴うグローバル人材の新規採用は果敢に行う予定。このように業績不振に陥る前に戦略的に人材のリストラにも着手。その機会に終身雇用の考え方を改める企業が出てきたのです。(東洋経済オンライン 11月17日)

リストラに直面した社員が困惑するのは、タイミングが早すぎることである。合理化を急ぐ企業側の事情もわからないではないが、希望退職の締め切り時期が目の前に迫っているから、慌てふためいてしまうのだ。

そもそも企業が自社の雇用方針を明確にして、とくにリストラに対する考え方や基準を明文化すればよい。経営陣を無給にして、全社員の給与を引き下げて苦境を乗り切れればよいが、それには限界がある。

社員を物品のように扱うリストラは論外だが、企業存続に不可避となりうる手段と考えているのなら、採用時にきちんと説明することが望ましい。これから入社する応募者には夢のない情報だが、それ以上に、この問題では合意のほうが重要である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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