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ダイエー、正社員全員が「転勤なし」を選択可能に

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ダイエーは2015年春から、すべての正社員を対象に結婚や育児を理由に転勤しない働き方を選べる制度を導入する。希望すれば、婚姻届の提出から6年間、育児では子供の高校卒業まで転勤がなくなる。同居する親族の介護でも転勤を猶予し、1日5~7時間の時短勤務の利用対象も拡充する。人手不足が続くなか、働きやすい環境を整えて人材を確保する。
2月末時点のダイエーの正社員数は約5200人。従来は店舗を持つ北海道から九州まで全国転勤が前提だった。
今後は正社員一人ひとりが転勤のない働き方を選べる仕組みとし、12月から希望を受け付ける。正社員全員が転勤のない働き方を選べる制度は珍しい。(日本経済新聞 11月9日)

雇用観が大転換したことを象徴する事例だが、もっと早く、こうした制度を運営できなかったのか。企業成長の論理から転勤制度が設けられたようにも見えるが、根っこにあるのは滅私奉公の精神である。滅私奉公がいわばDNAとなって、日本企業に巣食っていたのだ。

長時間労働も滅私奉公の産物だ。いまもなお終電近くまで働くことを是とする会社では8時ごろに帰宅しようとすると、上司が「もう帰るのか?目標達成したのか?」。そうとがめるという。人材紹介ベンチャー企業でのエピソードだ。

滅私奉公を払拭するのは容易ではない。ノー残業デーや早帰りデーなどを制度化したところで、それ以外は長時間労働デーとして定着してしまうだけだ。

社長から課長職にいたる全員が言動をあらためない限り、どんな仕組みをつくっても形骸化するのは必至である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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