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政府方針「特許は会社のもの」

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政府は、社員が仕事で発明した特許を「社員のもの」とする特許法の規定を改め、無条件で「会社のもの」とする方針を固めた。これまでは、十分な報償金を社員に支払うことを条件にする方向だったが、経済界の強い要望を踏まえ、こうした条件もなくす。企業に有利な制度に改まることになり、研究職の社員や労働団体は反発しそうだ。
政府が条件として検討してきた十分な報償金制度をめぐっては、経団連などが「条件の内容が不明確で使いにくい」などと反対し、無条件で「会社のもの」にすることを強く求めていた。方針転換は、こうした企業側の意見に配慮した。
特許庁は3日の特許制度小委員会で新方針を説明し、来年の通常国会に特許法改正案を提出する考え。
いまの特許法では、社員の発明の意欲を高めるため、仕事で発明した特許は「社員のもの」とし、会社は発明にみあった対価を払って特許を譲ってもらう必要がある。対価の金額をめぐる訴訟が相次ぎ、産業界は「会社のもの」にしたいと主張。政府は6月、十分な報償金を支払う仕組みがある企業に限り、「会社のもの」にできる特例を設ける改正方針を決め、具体案の検討に入っていた。(朝日新聞デジタル 9月3日)

報奨金欲しさに特許の取得に励む社員がどれぐらいいるのか。金銭が研究開発のモチベーションを向上させるようでは本末転倒だが、会社側は成果には応えなければなるまい。「特許は会社のもの」になってしまえば、人材の流出は避けられない。

どこに妥協点を見出したらよいのか。たとえば研究室も研究室の機器・備品も会社の所有物だし、研究室スタッフの人件費も、研究室の電気代も会社負担だ。特許による利益から、研究開発に関わった全てのコストを差し引いたらどうなるだろうか。

一定の計算式で研究開発コストの会社負担分を差し引いて、残りを本人への報償金に振り当てればよいが、それも面倒だろうから、利益を会社と本人で山分けするなどスッキリとした方法に決めてしまうのが現実的だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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