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「すき家」経営幹部は「定期研修で意識改善を」

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牛丼チェーン大手「すき家」の過重労働問題をめぐり、ゼンショーホールディングスが設置した第三者委員会(委員長・久保利英明弁護士)は31日、一定以上の長時間労働を禁止する厳格なルールを設けるなど、労働環境の改善を求める提言を同社に行った。
提言を受け、小川賢太郎会長兼社長は同日の会見で「企業規模が大きくなり、事態を把握しきれていなかった。反省している」と述べた。今後は残業時間の上限を月45時間に減らしていくほか、事業会社のゼンショーに社外役員を置いて経営監視を強める方針を示した。
第三者委の調査報告書によると、店舗勤務歴のある社員の大半が24時間連続勤務を経験し、バイトを含めて恒常的に月500時間以上働いている人もいた。またサービス残業に加え、6時間以上勤務しても休憩を取れないといった法令違反も慢性化し、2012年度には社員の居眠り運転による交通事故が7件起きていた。
問題が是正されなかった背景として、久保利委員長は「会社が短期間で急成長を遂げた成功体験から、幹部の間に過重労働を容認する文化が根強く、法令を軽視していた」と指摘した。
その上で、深夜の「ワンオペ」と呼ばれる1人勤務体制を解消するほか、幹部への定期研修で意識改善を図ることなどを求めた。(SankeiBiz 8月1日)

従業員の健康管理と業績の向上はどちらが大切なのか。この初歩的な問題に結論を突きつけた提言である。提言は幹部に対して定期研修で意識改善を図ることを求めたが、本心は幹部の入れ替えなのかもしれない。

これはどの組織でも同じだが、激烈な競争を勝ち抜いて幹部に昇進した人物にとって、求められての意識改善は、自身の足跡を否定されたかのようなものなのだ。(理解はできても納得はできない)というのが、おおかたの胸中だろう。第三者委員会も定期的な研修によってスンナリと意識が変わるとは、本気で思っていないのではないか。

どんなコンプライアンス遵守体制を固めたところで、幹部が本心から承諾できなければ形骸化する。ゼンショーホールディングスの就労環境が真に改善されるのかどうかは見守るしかないが、まずは幹部陣が従業員に謝罪と反省を述べることが第一歩だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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