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大王製紙顧問が社長を提訴「特別背任めぐり名誉に傷」

大王製紙

大王製紙の井川意高(もとたか)前会長(49)による巨額借り入れ事件にからみ、父親の井川高雄顧問(76)が23日、同社の佐光(さこう)正義社長(58)を相手に、新聞への謝罪文掲載と1億1千万円の慰謝料などを求める訴訟を東京地裁に起こした。この事件で高雄顧問も社内処分され、その内容を公表されたことで名誉を傷つけられた、と訴えている。
訴状などによると、意高氏の巨額借り入れが発覚した後の2011年10月、同社はこの問題の社内処分として高雄氏を顧問から解職し、公表した。高雄氏は「(意高氏の独断だった)巨額借り入れに、自らも重い責任があるとの印象を与えられた」としている。社長個人を訴えたことについて、高雄氏の代理人は「会社の方向性を誤らせた責任を問いたい」と説明した。
大王製紙は「内容を把握していないのでコメントは控える」との談話を出した。高雄氏は12年10月に顧問に復帰している。意高氏は、会社法違反(特別背任)の罪で懲役4年の実刑が確定している。(朝日新聞デジタル 6月23日)

会社が社内処分の内容を公表したことは、至極真っ当な情報開示である。だが、創業家からすれば、家臣に名誉を傷つけられたという心証を拭いきれず、到底看過できないのではないか。

これはガバナンスの問題ではない。情念の炎が燃え盛り、収まりがつかないのだ。社会性や公益性の遵守に徹する創業家もあれば、みずからを雲上人と妄想する創業家もある。

大王製紙の一件は、顧問を解職された高齢の人物がふたたび顧問に復帰したことで、禍根の火種が残されてしまったのだが、単純に良し悪しで評することは表層的に過ぎる。もはや禍根こそが存在理由となったのかもしれず、そうだとしたら、その根深い心情は創業家の宿業のようなものだ。

あくまで一般論だが、創業家にとって最優先課題は創業家の安泰で、会社の維持発展は二番目の優先事項なのである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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