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内々定辞退防止に奔走する企業のあの手この手

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来春大学卒の就職活動は、景気回復で学生の売り手市場の様相が強まる。
求人数は伸びても、内々定は一部の優秀な学生に集中しがち。そこで中小企業は、入社意欲を高めるノウハウを研修で学んだり、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を駆使したりと、引き留めに懸命だ。
5月下旬、東京都心のビルで、就職情報会社マイナビ(東京)の「内定辞退防止研修」が開かれた。「アルバイトで工夫をし、成果を出してきたことが、仕事にもつながると思って評価しました。ぜひ活躍してください」「ありがとうございます」受講した企業の人事担当者らが、採用側と内々定になった学生側に分かれて模擬面談を行った。会社が必要とする人材であることを強く印象付け、入社意欲を刺激するねらいだ。保護者に手紙を出すなどのノウハウも伝授された。
(中略)
リクルートホールディングスの調査によると、来春大学卒の求人数は計68万人で、前年より25.6%増加。うち中小企業は44.5%増で、優秀な学生を巡って争奪戦が起きている。

そんな中、企業の人事担当者と内々定者が交流するSNSに「内定辞退予備軍発見機能」を搭載するサービスも登場した。開発した「ガイアックス」(東京)によると▽人事からの質問に対して回答が遅い▽長期間投稿がない――などの学生を順位付けし、人事担当者専用画面に「内定辞退予備軍」と表示する。早期発見で、人事担当者の対応を促すねらいだ。その他、懇親会やスポーツなど、入社前からイベントを開催して交流を深める中小企業も多い。(読売新聞 6月15日)

内々定の辞退は大手企業や人気企業でも起きている。原因は、新卒市場がとくに一流大
学の学生にとって売り手市場になったことだけではない。内々定を出す時期がいくらなんでも早すぎるのだ。

来年卒業予定の高偏差値大学の学生は、おおかた4月上旬には内々定を確保しているが、
卒業までに1年もある。内々定先が第一志望でなければ、もう少し就職活動を続けて、もっと意に沿いそうな企業に鞍替えする学生がいるのは自然だ。

内々定者の交流会に出席しても、内々定を辞退する学生はいる。「交流会に出るとOB訪問や面接では見えなかった会社の雰囲気が見えてくるが、自分に合わないと判断して辞退する学生もいる」(都内の私立大学4年生)。志望先にこだわりを持つ、ある意味でキャリアプランのしっかりした学生ほど、その傾向は強いという。

就職活動の解禁日と内々定の提示日を改めない限り、この問題は根本的に解決しない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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