Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

出産から6カ月未満で戻った社員に60万円を補助

ninpu

出産後はできるだけ早く職場に戻ってきて――。
ダイキン工業は育児休業を短く切り上げ、出産から半年未満で職場に復帰した社員への保育費補助を増額する制度を今月導入した。
キリンビールやベネッセコーポレーションなど育休期間を短縮する代わりに復職後の働き方を柔軟にする企業はあるが、出産後に早く職場に戻りたい社員を金銭面で補助する支援策は珍しい。

ダイキンは職場に復帰した最初の1年間にかかった保育園の延長保育サービスやベビーシッターの利用料、子育てを支援してくれる親を呼び寄せる旅費などを対象に補助を支給する。
これまでは「原則1年」の育児休暇を取得したあと復帰した社員には、子供が小学校を卒業するまで毎年20万円を上限に補助していた。
今後は出産から6カ月未満で戻った社員には最初の1年間のみ40万円上乗せし、合計60万円まで補助する。(日本経済新聞 4月10日)

ここまで手厚く処遇するほど人手が足りないのかとか、ダイキン工業の経営幹部には良き市民が揃っているのだろうとか、あるいは大手企業にこんな支援策を次々に取られたら、中小企業に女性は就職したがらなくなってしまうのではないか――など、記事を読んでいろいろな想像が駆けめぐった。

社員の家族をどれだけ慮れるかは、企業の“社会姿勢”を推し量るベロメーターのようなものだ。
いくらCSRを対外的にアピールしても、社員に冷たければCSRは虚飾にすぎない。1990年代のリストラには、たとえば対象者が2人いて1人を選ばなければならない場合、扶養家族の負担が少ない社員に辞めてもらう。
そんな判断があったそうだ。社員の家族を路頭に迷わせないという配慮があったのだ。

ダイキン工業のニュースは、戦略よりも人心を感じさせる。財源が豊富でも人心がなければ、これだけ手厚い処遇はしないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。