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外資系やベンチャー対象に解雇を明記する雇用指針案

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政府は12日、解雇などをめぐる労使の紛争を予防するための雇用指針案をまとめた。
外資系やベンチャー企業を想定し、低い人事評価が続いた場合などに解雇がありうると労働契約に明記するよう促す。 日本の労働紛争は裁判官の裁量が大きく、予測可能性が低いといわれている。透明性を高めることで、企業の誘致や育成をはかる。
指針が想定しているのは、転職が多い外資やベンチャーといった企業の管理職や専門職。
解雇を(1)健康上の理由で仕事ができないとき(2)一定期間、相当に低い人事評価が続いたとき (3)会社の経営悪化や組織再編で人員を減らすとき――に3分類。 それぞれに「解雇する場合があること」を労働契約書や就業規則に明記するよう促す。「地位、功績、雇用期間その他の事情に応じて一定の手当を払う」ことも求める。

日本の法律は原則として企業が30日前に予告すれば正社員でも解雇できると定めている。
ただ判例では、合理的な理由が無いとされて解雇が無効になることも多い。 実際に裁判になってみなければ、労使どちらの言い分が通るかが見えにくかった。 あらかじめ解雇の要件を明確にするよう促す政府指針が、裁判の予測可能性を高める効果を期待している。(日本経済新聞 3月13日)

何とも危うい。一見合理的なようだが、合理的であるだけに雇用側に都合のよいように乱用されかねない指針だ。外資系企業とベンチャー企業を対象にしているとはいえ、ベンチャー企業の定義はもはや曖昧だ。その昔、ベンチャー企業には「設立5年以内、研究開発型、売上高対研究開発比率が10%以上」など一定の定義があったが、いまは自称ベンチャーの時代である。

この指針に法的根拠が与えられたら、中小規模の企業がベンチャーを自称して、我も我もと人員削減の切り札に乱用することは必至だ。「地位、功績、雇用期間その他の事情に応じて一定の手当を払う」とあるが、どだい無い袖は振れない。資金繰り悪化で規定の退職金を支払えなかったり、あるいは、あれこれと理由をつけて支払わなかったりする企業はゴマンとあるのに、この指針は性善説にすぎる。

第一、入社するときに一筆書かされた社員は腰かけ気分にならざるをえまい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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