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介護就労者が初の減少、低賃金で流出 厚生労働省分析

介護業界から人材が流出している。厚生労働省の分析によると2022年は離職した人が新たに働き始めた人を上回り、就労者が前年より1.6%減った。飲食・小売りや製造業などで賃上げが広がり、より良い待遇を求めて転職する人が増えた。介護を必要とする高齢者は増えており、処遇の改善による介護士の確保が急務になる。
「雇用動向調査」から、厚労省が介護関連に絞って入職率から離職率を差し引いた「入職超過率」を出した。プラスなら働く人が増え、マイナスなら減っていることになる。
 試算した17年以降では20年まで!%程度のプラスだったが、21年は0・6%のプラスにとどまった。22年は初めてのマイナスだ。実数では約6万3000人の減少とみられる。
 医療関係者を含む「医療・福祉」の入職超過率も22年は0・9%のマイナスで、調査を始めた1999年以降で初めてという。
 背景には介護の処遇が他の産業よりも見劣りすることがある。介護職員の平均給与は22年に月29・3万円と、全産業平均の36・1万円より6万円以上少ない。23年度の賃上げ率も介護事業所は1・42%と、全産業の春季労使交渉の平均である9・58%とは大きな差がある。
(日本経済新聞 10月23日)

 介護就労者が離職する主な理由は賃金水準なのだろうか。調査結果を確認すると必ずしもそうではないのはないのか。
介護労働安定センターの「令和4年度介護労働実態調査」によると、離職経験者のうち、直前職が介護関係の仕事であった労働者が直前職を辞めた理由は「職場の人間関係に問題があったため」が 27.5%で最も多く、次いで「法人や施設・ 事業所の理念や運営の在り方に不満があったため」の 22.8%、「他に良い仕事・職場があったため」 が 19.0%。「収入が少なかったため」は18.6%だった。
男女別では、男性は「法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため」が 30.3%、 女性は「職場の人間関係に問題があったため」が 26.9%で最も多かった。
介護職は低賃金だから人材を確保できないと介護事業経営者は強調するが、人材不足の原因は賃金水準だけではなく、それ以外の問題によるのではないのだろか。
UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの調査(21年実施)でも同様の結果が明らかになった。「上司や利用者・家族のハラスメント」が93.2%で最多で、「利用者・家族との人間関係がうまくいかない」が76.9%、「事業所内の人間関係がうまくいかない」が76.7%と続いた。
介護就労者の賃金水準の改善は必要だが、それ以外の問題も改善しないと、ますます離職者が増えてゆく。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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