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「1企業頼み」の終わり 副業という働き方

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「ハリネズミは繊細な生き物。出勤は20匹ずつ1日交代にしています」。3月下旬、東京都渋谷区の雑居ビル2階にあるハリネズミカフェ。経営者の清水正樹(32)は“従業員”のハリネズミを手のひらで包みながら、店内に目を配らせた。
昨年12月の開店以来、女性や外国人客らに受け、週末は行列ができる人気ぶり。来客数は多い日で130人、3月の月商は300万円に達した。
清水にとってこの店の経営は副業の一つにすぎない。本業はネット関連企業「園ファクトリー」の社員だ。同社でオンラインショップの運営を担当しながら、ハリネズミカフェのオーナーなど5つの名刺を持つ。昨年の副収入は数百万円。会社の給与を加えた年収は1千万円を超える。
「1つの企業に寄りかかって安心できた時代は終わった。自分の可能性を広げる機会は、社外にも広がっている」
(日本経済新聞 4月10日)

副業の解禁はスキルアップや人的ネットワークの拡大を目論んだ措置というのが、各社の公式見解である。たしかに他流試合の成果への期待も描いているだろうが、ホンネは人件費の抑制ではないのか。
人手不足による人件費の上昇を、社員の士気を下げずにどうやって食い止めるか。副業を許可しておけば、収入を増やせるかどうかは本人次第で、給与を抑制しても不満を封じ込められる。そう考えることは不合理でない。
会社側から、現行の給与水準で生活設計に支障が出るのなら副業で補ってほしいと申し出るケースもある。
知人が経営する会社では、高校受験を控えた子供をもつ社員に対して、現行の給与水準では教育費の捻出が厳しいとの理由から、休日の副業を認めている。その社員は毎週土曜日と日曜日にビル清掃業務に従事しているという。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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