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古河電工が「全員を均等に育てる」人事から転換した狙い

古河電気工業では、AIデータセンターの需要拡大を背景に、光ファイバーや光デバイスなどの事業が急成長している。事業環境が大きく変化する中、同社は人材の育成や獲得、リーダーシップの在り方など、人事戦略の軸足も変えている。(中略)同社CHROの滝田博子氏に、人事改革の現在地と今後の方向性を聞いた。
(中略)
滝田 かつての人事部門は、正確さや正しさ、公平さを重視していました。しかし今は、それらと同じぐらい、現場の社員にメッセージが直感的に伝わり、共感を得られているかも重視しています。テキストの説明を詰め込むよりも、社員が自発的に取り組みたいと思えるよう、伝わりやすさに知恵を絞っています。リーダー育成のための「フルカワセブン」を社内に告知する際にも、当時のターゲットであった部長層になじみのある「ウルトラセブン」をヒントにするなど、社員の関心を引くよう伝え方を工夫しました。
 また、全社共通の枠組みを設けつつ、事業部門がそれぞれのニーズに合わせて活用できる余白をつくることも必要です。そして、制度を作り込むこと自体を目的にせず、実際の運用を通じて現場の課題を解決していくことを重視しています。
 人事施策には、一つ実施すれば全てがうまくいくような特効薬は存在しません。
(Japan Innovation Review 10月21日)

事業環境が変われば、必要な人材もリーダー像も変わる。人事部門にも、制度を正確、公平に運用するだけでなく、社員の行動を変え、事業の成長を支える役割が求められる。同社が重視する「伝わりやすさ」は、その変化を象徴している。
リーダー育成策「フルカワセブン」の告知に、部長層になじみのある「ウルトラセブン」をヒントとして用いた工夫は興味深い。相手が何に関心を持ち、どのような言葉なら心に届くのか。そこまで考えて初めて、制度は規則から行動のきっかけへと変わる。ただし、伝え方が巧みでも、施策の中身が現場の課題に応えていなければ、共感は長続きしない。
全社共通の枠組みを設けながら、事業部門が必要に応じて活用できる余白を残す方針にも意味がある。公平性を求めて一律の方法を適用すれば、異なる事業の現実を捉え損なう。一方、現場に任せるだけでは、会社としての一貫性が失われかねない。共通の原則を保ちながら、現場で試し、結果を確かめ、修正する。その地道な往復が、制度を生きたものにしていく。
 人事制度は、つくった時点で完成するのではない。社員がその意味を理解し、自分の仕事とのつながりを見いだし、行動を変えていくなかで、少しずつ形を得ていく。会社が示す方針と、働く人が日々感じている現実。その間にある距離を測り、埋め続けることも人事の仕事である。制度が本当に根づいたかどうかは、規則の整い方よりも、社員の日々の仕事にどのような変化が生まれたかに表れる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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