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主要な退職代行事業者、1年間で2割超が「サービス停止」

 帝国データバンクは、保有する企業データベースのほか、開示資料、各口コミサイト等から判明した主な「退職代行サービス」を展開する事業者(2025年10月当時)について調査・分析を行った。
 25年10月時点でサービス実態のあった、本人に代わって退職意思を会社に伝える「退職代行サービス」を展開する52事業者のうち、9月までの約1年間で少なくとも2割超に上る14事業者が「サービス停止」の可能性があることが分かった。また、退職代行事業者の倒産も1件発生した。未払い残業代や有休消化、退職日などを巡る交渉が「非弁行為」と見なされるリスクへの警戒感が高まり、昨年までの拡大局面から一転して、退職代行事業から撤退するケースが顕在化している。
 25年時点の料金は平均で約2.8万円だったのに対し、直近では約2.7万円とわずかに低下した。大手法律事務所などの参入により、「退職意思の通告」のみであれば民間代行より安価なケースもあるなど、価格競争の激化が背景にある。昨年時点でも退職代行サービスから撤退する事業者は少なからず発生していたが、急成長が続いた同市場には先行きへの不透明感も生じている。
(帝国データバンク作成ニュースリリースを要約 9月23日)

 退職代行サービスの市場が縮小局面に入ったという数字以上に興味深いのは、このサービスが「退職を代わりに伝える」という単純な仕事では済まなくなったことだ。退職代行サービス会社が減少した背景には、未払い残業代や有休消化、退職日などを巡る交渉が非弁行為と見なされるリスクがある。
 つまり、退職代行の需要がなくなったから市場が揺らいでいるわけではない。むしろ、会社を辞めたいという需要があるからこそ、どこまでを誰が代行できるのかという境界が問題になったのである。退職の意思を伝えるだけなら民間事業者でも対応できるが、会社との交渉まで踏み込めば法的な資格との境目が現れる。この境界線を曖昧にしたまま市場が急拡大したことが、事業者の選別を促している。
 料金が平均2.8万円から2.7万円へ下がったことも象徴的だ。大手法律事務所の参入によって価格競争が起きている。ここには、退職代行が一時的な流行ではなく、一定の社会的需要を持つサービスになったことの裏返しもある。
 それでも、この市場の行方を事業者数だけで測るのは適切ではないだろう。退職代行が必要になるのは、本人が退職の意思を直接伝えることさえ難しい職場が存在するからである。事業者が淘汰されても、その背景にある職場の問題まで消えるわけではない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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