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面白法人カヤックがブレストで「正しさ」より「文脈」を重視

アイデアに才能は不要であり、環境をつくることで組織全体をクリエイティブに変えることができる。特許庁の商標制度の普及施策「商標拳」やエンターテインメント施設「うんこミュージアム」など、常識を逆手に取ったアイデアでユニークなコンテンツを生み出す面白法人カヤックが実践するブレスト会議のノウハウをまとめた『失言会議』(すばる舎)から一部を抜粋。誰もがクリエイティブになれる「装置=会議」のつくり方を学ぶ。
(中略)
カヤックには、「変な兼務」をしている人が多くいます。管理部門でグループ会社の窓口をしながら、ゲームの家庭教師サービスの社長をやっている。一見すると、意味がよくわからない組み合わせです。しかし、そういう人がブレストに入ると、予想外の角度から話が出てきます。
 それは雑談ではありません。その人が背負っている文脈が、発言として立ち上がっているのです。たとえば、普段ゲームばかりやっている人に、あえて飲料のブレストに入ってもらう。すると、味や成分ではなく、「レベル設計」や「没入体験」という観点から話が出る。新しいものは、情報量から生まれるのではなく、文脈の差分から生まれる。その差分を引き出すのが、「人を掘る」という発想です。
 カヤックは、「自分らしさを仕事に持ち込む」ことを前提にしています。だから、未経験に寛容です。(Japan Innovation Review 9月17日)

 「アイデアに才能は不要」という言葉は、才能を否定しているのではない。むしろ、組織が才能を一部の人間に独占させないための思想だろう。カヤックの「変な兼務」が興味深いのは、兼務による業務量の増加ではなく、一人の人間の中に異なる文脈を共存させている点にある。
管理部門の仕事をしながらゲーム会社を経営する人、ゲームに詳しい人が飲料のブレストに参加する人。そこから出てくる「レベル設計」や「没入体験」という言葉は、飲料の専門知識だけを集めた会議からは出にくい。新しい発想とは、知識を大量に持つことより、異なる経験を持つ人間が出会ったときに生じる「ずれ」から生まれるからだ。
ここでいう「人を掘る」という発想は、人材活用の考え方にも一石を投じる。企業は通常、社員を職種や等級、専門性によって分類する。管理職、営業、技術者などの肩書は、組織を動かすには便利だ。しかし肩書だけでは、その人の特性は分からない。ゲーム好き、音楽好き、地域活動をしている、異業種で働いた経験がある――そうした仕事の外側にある文脈まで持ち込めたとき、一人の社員の価値は別の姿を見せる。
「未経験に寛容」というのも、たんに失敗を許すという話ではない。経験のない人間だからこそ、既存の常識を当然のものとして受け入れず、別の問いを持ち込める。組織がクリエイティブになるには、人間を職務の枠から少し解放し、異なる文脈が交差する場所をつくることなのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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