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マイクロソフトが実践するリアルタイム・フィードバック

人と組織の力を事業の成長につなげる鍵とは。組織設計から等級・評価・報酬まで、事業を伸ばす仕組みの作り方を論じる『経営に資する人事制度』(かんき出版)より一部を抜粋。半年に一度の評価だけで、日々の成果を適切に捉えられるのか。マイクロソフトやAdobeが実践するのが、上司と部下が週単位で成果や課題を話し合い、その記録を随時昇給や昇格の判断に生かす「チェックイン」という手法だ。
(中略)
 リアルタイム・フィードバックを評価制度と組み合わせる方法は、今やグローバルのトップ企業では当たり前に実施されています。
 マイクロソフトやAdobe、ゴールドマンサックス、デロイト、GEなどのグローバル企業では、定期的な評価によるランク付けをなくす「ノーレイティング」のスタンスを取り、リアルタイムにパフォーマンスとフィードバックを記録し、時期にかかわらず昇給や昇格などを行う「チェックイン」という手法を導入しています。
 チェックインを導入することによって、パフォーマンスの向上と評価の納得感を両立させているのです。
 また、チェックインでは、よく評価制度で問題になる「ハロー効果」や「近接誤差」のようなバイアスも回避することができるというメリットも持っています。
(Japan Innovation Review 9月16日)

 半年に1度の評価で、日々の仕事を正確に捉えられるのか。チェックインが突きつけているのは、評価の頻度だけではない。「人を評価する」という行為を、組織はどう考えるのかという問題である。
従来の評価は、一定期間の成果をまとめ、上司が評価し、昇給や昇格につなげる。だが半年という時間のなかでは、評価直前の出来事が印象を支配する「近接誤差」や、一つの目立った特徴が全体の評価を左右する「ハロー効果」が入り込む。過去を振り返って人を測る仕組みには、記憶という人間の弱さがどうしても介在する。
チェックインは、上司と部下が週単位で成果や課題を話し合い、その記録を昇給や昇格にも生かす。ここで重要なのは、評価を細かくすることではない。評価を「判定の場」から「仕事について対話する時間」へ変える点にある。
何ができたかだけでなく、なぜできなかったのか、次に何を試すのかを上司と部下が共有すれば、評価は過去への採点ではなく、次の成果をつくるための道具になる。
ただ、リアルタイムで記録すれば自動的に公正になるわけではない。上司との対話が形式化すれば、週1回の「評価業務」が増えるだけである。問われるのは制度の精緻さより、上司が部下の仕事を見て、対話し、その変化を記録する覚悟だろう。
社員は半年に1度だけ成長するわけではない。だから評価制度も、人間の時間に合わせて変わらなければならない。チェックインの本質は、評価を変えることではなく、人の成長が起きる時間を、制度のなかに取り戻すことにある。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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