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「原酒の熟成と同様に人財も中長期で見る」サントリーの人事戦略

サントリーホールディングスは、創業の精神「やってみなはれ」と「利益三分主義」を軸に、独自の人材マネジメントを展開している。65歳定年という長期にわたる社員との関係性を前提に、社員一人一人が生涯チャレンジャーとして活躍し続けるための仕組みとはどのようなものなのか。同社執行役員人財戦略本部副本部長の森原征司氏が登壇した講演の内容を要約して紹介する。
(中略)
 この人材マネジメントの中核をなすのが「生涯イチチャレンジャー」という発想だ。サントリーは定年を65歳に設定しており、「基本はプレーヤー」として、年齢にかかわらず現業での経験や自己のスキルアップを通じて学び挑戦し続ける、ということを基本的な考え方としている。
 森原氏は、2代目社長、佐治敬三氏の言葉に由来する「人財原酒論」を紹介し、「原酒が長い年月をかけて熟成しながら育っていくように、人も短期的に判断せず、中長期で成長を見ていく必要がある」と説明。こうした風土のもと、従業員エンゲージメントスコアは高水準を維持し、離職率も低く抑えられているという。
(Japan Innovation Review 9月1日)

サントリーの「生涯イチチャレンジャー」という考え方で注目したいのは、65歳まで働けることではない。「基本はプレーヤー」という言葉に込められた、人を見る尺度である。
企業では、昇進するにつれて「自分が仕事をする人」から「人を動かす人」へと役割が変わってゆく。管理職になれば、現場の仕事から離れるのが必然という考え方もある。しかしサントリーの人材観は、そこに一線を画しているように見える。
役職が上がっても、仕事を生み出す力、専門性を磨く姿勢、現場で価値をつくる力を失わない。つまり、マネージャーであることとプレーヤーであることを、二者択一にしないのである。
これは「人財原酒論」とも重なる。人は一定の年齢や役職に達した時点で完成するのではなく、経験を重ねながら価値を変えてゆく。管理職として人を育てる経験も、プレーヤーとして現場で培う経験も、次の仕事の力になる。だから「生涯イチチャレンジャー」は、長く雇用するという制度論だけではない。年齢を重ねても、みずらの仕事の価値を更新し続けることを求める思想なのである。
社員のキャリアを役職で完成させない。マネージャーになった瞬間にプレーヤーとしての成長を終わらせない。その人材観こそ、65歳という年齢を超えて、社員の「熟成」を考えるサントリーの人材戦略の核心なのではないか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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